当初研究メンバーは、中野市を含む長野県北信地域が、なぜ県内で投票率が低いのかを詳細に分析することから始めようとしました。確かに、課題解決を行うには、その原因を調べることからスタートします。しかし、8月に知事選、翌年には統一地方選で県議選があることから発想を転換し、できることから実践することとしました。そして、短期的な目標として、県知事選、県議選において「中野市、山ノ内町の投票率最下位脱出」。中・長期的な目標として、「長野県は健康長寿も投票率も日本一」掲げました。
最初に、メンバー全員で自由な雰囲気でブレインストーミングを行い、59項目のアイデアを出しました。それを今度は実現の可能性を冷静に判断し、知事選ですぐにできそうな取り組み、中長期的に取り組むべきもの、実行は難しいものに分類しました。その結果、知事選に際して、中野市を実践のフィールドとして行った取り組みは以下の通りです。
まず、期日前投票所のイメージを一新しました。投票の重要性、特別感を感じてもらうため、投票箱をゴールドにし、そこまでの通路にレッドカーペットを敷きました。投票所にはやさしいBGMを流し、職員はカジュアルな服装、そして笑顔で市民を迎えました。また、夏の選挙でしたので、ウエルカムドリンクとして冷たいお水を用意しました。これまで効率化のために投票所の数を減らしてきましたが、そうした地域を中心に、出張期日前投票所を新たに6カ所開設しました。選挙時啓発として、道路の電光表示や、facebookによる投票の呼び掛け、各種お祭り、イベントでのメンバー総出による投票の声掛けも行いました。常時啓発としては、市内の高校生に期日前投票所の投票事務を体験してもらいました。
正直言って、ゴールド投票箱、レッドカーペッドが、投票率アップに直接つながることはないと思います。しかし、こうした中野市選管の最下位脱出のための試行錯誤の取り組みは、テレビや新聞で大きく取り上げられ、中野市が最下位であることが市民に知られることとなりました。最下位は嫌だという危機感が広がり、間接的に投票行動につながったと思います。結果としても、知事選での中野市の投票率は、19市中14位にアップ、山ノ内町も、58町村中50位と、県内最下位を脱出することができました。こうした実践が評価され、政策研究の発表会では、次年度以降、長野県全体として、中高生の模擬選挙や成人式での模擬選挙など、中長期的にできることを行っていくことになりました。